任期満了に伴う千代田区議会選挙が31日に投開票を迎えた。結果は元都議で「都民ファーストの会」所属の樋口高顕氏が9534票を獲得し初当選。最有力と見られていた自民・公明が推薦する元区議の早尾恭一氏は7668票を獲得したものの次点に終わった。
樋口高顕氏が当選した裏には、小池百合子東京都知事の全面的なバックアップがあった。樋口氏は学生時代に議員インターンシップとして小池事務所に入門。長らく選挙活動を支えてきた。以来、小池氏と行動を共にし、4年前に行われた東京都議会議員選挙では都民ファーストから立候補し、当選を果たしている。小池氏にとって樋口氏は可愛い一番弟子といったところなのだろう。
一方、自民・公明が推薦する早尾恭一氏は苦戦を強いられた。早尾氏は石川雅己前区長のマンション購入問題を批判する急先鋒として議会で活躍し、選挙戦では「議会の正常化」を訴えた。選挙戦終盤には自民党の萩生田光一文科相や野田聖子幹事長代行、橋本聖子オリパラ担当相などが応援に駆けつけたが支持は広がらなかった。
自民党の人気低迷と小池百合子復活を印象付ける選挙だった。
自民党は新型コロナウイルスへの対応のまずさから危機的状況に陥っている。菅内閣の支持率は政権発足時から40%余りも低迷し、最新の世論調査では初めて不支持が支持を上回った。1ヶ月で終わると思われていた緊急事態宣言も延長され、国民の不満はピークに達している。それが影響したのか、同日行われた北九州議会議員選挙では、22人の現職のうち6人が落選の憂き目にあっている。
一方の小池氏は新型コロナウイルス騒動を切っ掛けに盛り返してきている。小池百合子氏率いる都民ファーストは4年前の東京都議会議員選挙で圧勝し第一党に躍進。その勢いを借り「希望の党」を結成し国政に進出しようとしたが「排除」発言を切っ掛けに失速。小池氏は代表の座を早々と降りてしまった。
そこに降って湧いてきたようなコロナ騒動―
東京都知事選挙に出馬した小池氏は、新型コロナウイルスへの対応が評価され、史上2番目の366万票余りを獲得し再選を果たした。そして東京都議会議員選挙の前哨戦と見られていた千代田区長選挙の勝利。この情勢が7月の東京都議会議員選挙まで続けば、都民ファーストの会が息を吹き返す可能性が高い。
ポイントは自民党が票を落としても野党に票が流れることはないという点だ(北九州議会議員選挙では無所属に多くの票が流れた)。有権者が求めているのは与党でも野党でもない第三党。人気の高い小池氏が政党を結成し、次期衆院選に出てくれば台風の目となる可能性は十分にある。“選挙の女王”小池百合子の目は、既にそこを見据えているのかもしれない。
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