世界経済フォーラムは12月17日、世界各国の男女平等の度合いを調査した「ジェンダー・ギャップ指数」を発表しました。日本は前年の110位からランクを落とし121位。政治分野でランキングを下げたことが響いたようです。政府は法整備を行い政界への女性進出を促していますが、そこには大きな危険があるともいわれています。
日本のジェンダーギャップが前年から10位下がって121位になったんですよね? なんで順位が下がっちゃったんですか?
政治の分野で125位から144位に下がったことが響いたんだ。
女性の政界進出が進んでいないという話ですか?
そうなんだ。都道府県知事の中で、女性は山形県の吉村美栄子さんと、東京都の小池ゆり子さんの二人しかいないし、国会議員も女性の割合は10%程度しかないんだ。地方議会でも女性議員は少ないよ。
女性議員が政界に進出しないのはどんな理由があるんでしょうか?
男女をとりまく社会環境が影響しているのではないかと言われているんだ。日本には昔から男は汗をかいて働いて、女は家事と育児をやるという考えがあるよね。そういう伝統的な考えが女性の政界進出を阻んでいるのではないかと言われているんだ。
政府は対策を打っているんですか?
平成30年5月に「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が施行されたよ。国政選挙と地方選挙で男女の候補者数ができる限り均等にすることを各党に求める内容なんだけど、僕は「女性の政界進出を阻む壁がある」という前提で話を進めていくのは危険だと思うんだ。
なんで?
それを理解するには「アファーマティブ・アクション」という考えを知る必要があるよ。
アファーマティブ・アクション?
アファーマティブ・アクションとは「少数派や弱者に対する過去にあった差別をなくそうとする取り組み」のことなんだ。考えとしては素晴らしいと思うんだけど問題点もあるんだ。
差別をなくすのはいいことだと思うんですけど・・どこに問題があるのでしょうか?
アファーマティブ・アクションはマジョリティに対する「逆差別」を生む可能性があるんだ。逆差別が実際に問題になった例としては、アメリカの「バッキ訴訟」が有名だよ。バッキ訴訟とは、カリフォルニア大学デイビス校メディカル・スクールの試験に落ちた白人男性のアラン・バッキが同校を訴えた事件なんだ。
かつて、アメリカでは入学試験に「クオータ制」というのがあったんだ。クオータ制とは合格者の定員の一部をマイノリティに割り当てる制度で、デイビス校では16%のマイノリティ枠、つまり黒人の枠を設定していたんだ。このときのバッキの主張は「マイノリティに対する特別枠がなければ私は合格していた。特別枠は教育の平等に反する」というものだったんだ。
白人であるという理由だけで不合格になったのであれば、それは白人に対する差別になるわよね? マイノリティへの差別をなくすために行ったことが、逆にマジョリティに対する差別を生んでしまったのね。
クオータ制はマジョリティに対する差別につながるため、現在アメリカではほとんど行われていない。
他にも「個人の能力が軽視される」という問題もある。クオータ制を試験に導入すると、特別枠を満たすために合格ライン以下のマイノリティの人が合格させられる可能性があるんだ。
マイノリティであるという理由だけで特定の人を優遇するのは、これもマジョリティに対する差別になるわよね。それに、個人の能力以外の要素で合否が決まるというのはなんか違う気がするわ・・
そう。クオーター制は「個人の能力を軽視する」ことにもつながってしまうんだ。「女性の政界進出には壁がある」という前提で話を進めていけば「女性候補者を優遇しよう」「クオーター制を導入しよう」という話につながりかねない。
たとえば、女性候補者には一定の票を上乗せするという制度ができたらどうなるかな。女性議員は確実に増えるだろうけど、これは男性候補者に対する逆差別になるよね。「女性に対する優遇措置がなければ、私が当選していた」と訴える男性候補者はきっと出てくるはずだよ。それに政治的資質に欠けている人が「女性」という理由だけで当選しちゃったら、政治家のレベルは更に下がっちゃうだろう?
これ以上政治家のレベルが下がるのは勘弁してほしいわ・・女性議員を優遇しよういう動きはあるんですか?
一部の女性議員は言っているけど、男性議員が多数を占める現状ではそうした法案が通る見込みはない。でも女性議員が増えていけば将来どうなるかわからないよ。
そもそも「女性の政界進出を阻む壁がある」というのは妄想なんじゃないかな。立候補の基準は男女平等だからね。女性の政治家が少ないのは単に政治に興味がないから。女性の政界進出を促したいなら政治に興味が湧くような教育を行うことが重要なんじゃないかな?
なるほど。女性政治家を増やすには政治教育が重要ってわけね。
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