石破茂氏が自民党総裁になれなかった本当の理由

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14日、自民党総裁選挙の投票が行われ、菅義偉官房長官が総裁に選任された。岸田文雄政調会長は89票を集め次点、石破茂元幹事長は68票にとどまった。

自民党総裁選は通常の党員投票ではなく、国会議員票のみで行われた。自民党は緊急事態(安倍首相の任期途中の辞任とコロナ禍)であることを理由に挙げているが、政治評論家は石破氏に引導を渡すためと見ているようだ。

石破茂元幹事長は、2012年に行われた総裁選の1回目投票で、165票もの地方票を獲得し、安倍首相を上回ったことがある。石破氏は地方に票を持っているのだ。党員投票にすると、地方で大量の票を獲得し選挙に勝ってしまう恐れがある。それを避けるため党員投票を避け国会議員のみでの投票という形にした。新型コロナは単なる口実というわけだ。

石破茂元幹事長が党員に嫌われているのは周知の事実だ。自民党を裏切って出て行ったのが最大の理由と言われている。

1993年、石破氏は宮沢喜一内閣の不信任案に賛成して離党。小沢一郎氏と行動をともにした。このため、党内には「苦しい時に出ていった裏切り者」との声が根強く残っている。麻生太郎内閣では農水相を務めながら、麻生氏に退陣を迫ったこともある。安倍政権時代には、敢えて安倍首相と反対の論陣を張って目立とうとしたり、政権の足を引っ張るような言動も繰り返してきた。

石破氏の不義理が不人気の理由であることは確かだか、筆者はもっと切実な理由があると見ている。それは選挙に勝てなくなる恐れがあることだ。

安倍政権は度重なる「反安倍キャンペーン」に晒されていたにもかかわらず、支持率が30%を割ることはなかった。それは、保守層に支持されていたからだ。安倍政権は就任以来、「戦後レジュームからの脱却」を旗印に憲法改正を主張してきた。憲法改正は保守層の悲願であり、だからこそ7年8か月に渡り、安倍政権を支持し続いてきたのだ。自民党が今後も選挙に勝ち続けるには、保守層に配慮し安倍路線を継承する必要があるわけだ。

ところが石破氏は安倍政権が敷いてきた路線をひっくり返すような発言をしている。決定的なのは皇位継承問題についてだ。

石破茂元幹事長は、2019年12月のテレビ番組で、皇位継承問題について「皇室が途絶えることは国の本質が変わることだ。女系だからダメだという議論には賛同していない」と述べ、「女系天皇」の容認を含めて議論すべきだとの考えを述べている。

この考えは、男系継承を絶対とする保守層には受け入れ難いものだ。石破氏が保守層から脱兎の如く嫌われているのはこれが理由だ。保守層にとっては、この一点だけでも自民党を支持しないだけの十分な理由となり得る。

石破茂元幹事長が総裁に就任すれば保守層が離れ、自民党は間違いなく議席を減らす。「選挙に強い自民党であり続けてほしい」と願う党員にとって、「石破茂」という選択はハナから有り得ないのだ。

総裁選に敗れた石破氏。次期総裁選について記者団に聞かれると「まだ終わったばかりだ。一党員として、自民党が多くの方々の支持を得られるように協力する」と答えた。石破氏にとって、今回の敗北は三度目。四度目の挑戦はあるのだろうか。

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