3日、安倍首相は改憲派の集会で、憲法改正に関するビデオメッセージを送り、その中で「現行憲法も制定から70年余りが経過し、時代にそぐわない部分、不足している部分は改正していくべきではないか」と述べた。
安倍首相は事ある毎に「自分の手で憲法改正を成し遂げたい」と語り、改憲の意志があることを表明してきた。確かに、今のままの憲法では、有事の際に自衛隊が戦力を十分に発揮できない可能性がある。こうした可能性を排除する為にも、一定程度の改憲は有りだと思う。なによりも、自民党の綱領には「現行憲法の自主的改正をはかり、また占領諸法制を再検討し、国情に即してこれが改廃を行う。」と書かれているのだから、自民党総裁が「改憲したい」と考えるのは当然だろう。
「保守派」が安倍政権を支持する理由はここにある。彼らは、日本の憲法は日本人の手によって作り変えるべきだと考えている。保守派にとって憲法改正は悲願なのだ。そのため、安倍政権が憲法改正を掲げている間は、どんなヘマをやっても― たとえば、消費増税を行い景気を悪化させても、新型コロナウイルスの抑え込みに失敗しても、保守派は安倍政権の支持をやめない。これが、今の安倍政権の支持率が高止まりしている理由の一つだ。
しかし、安倍首相は本気で改憲をしようとしているのだろうか? 疑問を持たざるを得ない理由はいくつかある。
最大の理由は、改憲議論が全く進んでいないからだ。議論が進まない理由の一つとして、野党が審議に応じないということが挙げられる。しかし、日本維新の会などの一部の野党はそうではない。議論を進めようと思えばできるのにも拘わらず、そうしないのはなぜなのか?
もう一つの理由は、国民投票によって否定される恐れがあるというもの。しかし、本当にそうだろうか? ここ数年、日本では大規模災害が多発している。大地震が毎年のように起こり、大雨による洪水も頻発。未知のウイルスも蔓延している。こうした事態を受け、国民の危機感は相当高まっている。自衛隊への信頼感が劇的に高まっていることからも、改憲の機は熟しているように思える。少なくとも、圧倒的多数で否決されるということにはならないはずだ。
最後はスケジュール的なものだ。安倍首相の自民党総裁としての任期は21年9月。改憲の手続きには時間が掛かるので、任期中に改憲するのはスケジュール的に難しい。「安倍首相の手によって」ということであれば、党則を改正して4選を可能にしなければならない。
新型コロナウイルスの感染拡大が加わり、憲法改正はますます遠のいたように見える。だとすると、安倍首相の発言にはどんな意味があるのか? 筆者は選挙対策と見ている。改憲の旗印を掲げておけば、保守派を繋ぎ留めておくことができるからだ。安倍首相は本気で改憲をする気があるのか? 憲法記念日を機に今一度考えてみたい。
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