東かがわ市の廃校が教育交流の名目で無償で中国に提供されようとして紛糾している。事の経緯を追ってみよう。
香川県東かがわ市では、2015年から藤井秀城前市長の肝いりで香港とのスポーツ交流を開始。その流れで17年には北京の「海淀(カイデン)外国語実験学校」との教育交流が始まる。関係が深まる中で、中国側は市に対して「拠点を作りたい」との申し入れをしてきた。それを受け、市は2020年3月に廃校となっている福栄小学校を無償貸与することを決定。水面下で計画を進めていた。
問題が発覚したのは、幸福実現党の宮脇みちこ氏の質問による。宮脇氏は2019年末の定例議会で次のような質問を行った。
「海淀(カイデン)の学校誘致計画については全くしらされていないが、この計画の全体像と進捗状況や市民の皆様への公表は今後どのようにしていくのか?」
質問が記載された「議会だより」が市民に配られたことによって問題は知れ渡ることになる。内緒で計画が進められてきたことに市民は激怒。反対署名活動が展開され、わずか2週間足らずで3800筆(東かがわ市の人口は28,305人)もの署名が集められ市長へ提出された。福栄小学校跡地が無償で提供されることは避けられたものの、市は国際交流は継続するとしている。
「また、国籍、性別、出生地、障がい、文化等、多様性を認め合う社会を目指す中の国際交流において、特定の国や地域に対する差別的な行為は避けなければなりません。そんな差別的、排他的な地域を脱し、多様性あるまちを実現し、何よりその大切さを子どもたちに感じ、考え、体験してもらうためにも、国際交流事業は続けていきます。」
なぜ東かがわ市は中国との交流に前のめりになっているのか。その理由は2つある。
一つは国際交流によって教育に独自色を出すこと。東かがわ市は過疎化が進み、近い将来「市が消滅するのではないか」と危惧されている。それを防ぐために市が目を付けたのが教育だ。中国との教育交流を進めれば、なんとなくハイレベルな教育をやっているように見える。「教育」を売りに人を惹き付けたいという考えを市は持っているようだ(交換留学などで中国人を招き入れれば経済も潤うし、人口現象にも歯止めがかかるという計算もあるのだろう)。
もう一つの理由はビジネスだ。東かがわ市の企業は、国内だけでなく中国内地でも手袋を製造販売している。東かがわ市は中国との経済的な結びつきが強く、簡単に関係を断ち切れないのだ。
米中の対立が激化する中、各国における中国の浸透工作は白日の下に晒されている。2018年にはクライブ・ハミルトン教授がオーストラリアへの中国の浸透工作を記述した「サイレント・インベーション」を刊行。ベストセラーとなった。同書が影響したのかオーストラリアは、それ以降反中に舵を切る。アメリカのトランプ政権は、全米75か所にある中国語の教育施設「孔子学院」の閉鎖を指示。共産党員の入国禁止や留学生の追い出しなど、1950年代の「赤狩り」を彷彿とされるような事態に発展している。
中国の浸透工作は日本においても進んでおり、東かがわ市の件はその一例と見るべきだろう。同様の工作は全国で行われている可能性が高く、有権者は議会の動向に目を光らせておく必要があるのではないだろうか。
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